訪問看護師として忘れたくない問い|家族の心に寄り添うということ

訪問看護

こんにちは。こんばんは。シンママナースのたまごです。

2022年1月、埼玉県ふじみ野市で在宅医療に関わる医療従事者が襲撃されるという痛ましい事件が起きました。

患者さんだった92歳の母親が亡くなった翌日、在宅医療を担当していた医療関係者らが自宅に呼ばれ、医師が散弾銃で撃たれて亡くなり、理学療法士らも被害を受けた事件です。

まずは、亡くなられた医師のご冥福を心よりお祈りするとともに、被害に遭われた方々、ご遺族や関係者の皆さまへ心よりお見舞い申し上げます。

この記事は、この事件そのものについて語るものではありません。

この出来事を知った一人の訪問看護師として、私自身が考えたことを書きたいと思います。


「家族への心のケアは誰がしていたのだろう」

この事件を知ったとき、私はまず、

「お母さんを支えていた時間の中で、家族への心のケアは誰がしていたのだろう」

と考えました。

92歳のお母さんが亡くなられたことに対して、一般的には「年齢を考えれば仕方がない」と受け止められることもあるのかもしれません。

もちろん、このお母さんもさまざまな病気を抱えていたのかもしれません。

それでも、ご家族にとっては違います。

私は44歳です。

母は71歳です。

それでも、私にとって母は今でも「母」です。

だから92歳であっても、その息子さんにとっては大切な母親だったのだと思います。

もし私が担当していたら、息子さんに寄り添えていただろうか。

最期の時間が近づくお母さんだけではなく、その隣にいる息子さんの気持ちにも目を向けられていただろうか。

ご家族に寄り添う立場の一人として、看護師は寄り添えていただろうか。

私は、そんなことを考えてしまいます。


私自身への問い

もちろん、この事件の関係者を傷つけるつもりも、責めるつもりもありません。

ましてや、「コミュニケーション不足だったのではないか」などと思っているわけでもありません。

現場で関わられた医療従事者の皆さんは、そのときできる最善を尽くされていたのだと思います。

だからこそ、私はこの事件を知ってから、

「もし私だったら、何ができただろう。」

そう、自分自身へ問いかけるようになりました。


ACPで教わった「船頭」の話

この事件を知ったとき、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の勉強会で教わった言葉を思い出しました。

「看護師は船頭です。患者さんやご家族と同じ船に乗っていますが、見ている方向が違います。」

患者さんやご家族は、過去を振り返ります。

「あのとき、こうしていれば。」

「元気だった頃に戻りたい。」

一方で、看護師は未来を見ています。

「この先どんな変化が起こるだろう。」

「少しでも苦しまない方法はないだろうか。」

同じ船に乗り、向かい合っていても、見ている景色は違います。

この話を聞いたとき、私は妙に納得しました。

そして、ふじみ野市の事件を知ってから、この言葉の意味を何度も考えるようになりました。

ACPについては、以前こちらの記事でもご紹介しています。患者さんやご家族と「これから」を一緒に考える時間の大切さについて書いています。

「人生会議(ACP)」って知っていますか?|父と5分だけ話して分かった大切なこと


家族の本当の気持ちを教えてください

この事件の答えは、誰にも分かりません。

私も、あのご家族に何があったのか、本当のところは分かりません。

医療従事者と息子さんが最後まで違う景色を見ていたのかどうかも、私には分かりません。

だから、この事件について何かを断定したいわけではありません。

でも、一つだけ思うことがあります。

訪問看護師は、ご家族にも寄り添いたいと思っています。

それでも、本当の気持ちは、言葉にしていただかないと分からないことがあります。

  • 「まだ病気や死を受け入れられない。」
  • 「怒りがある。」
  • 「怖い。」
  • 「もう介護に疲れた。」

そんな気持ちも、どうか一人で抱え込まないでください。

私たちは、その言葉を聞いて初めて一緒に考えられることがあります。

医療従事者としてだけではなく、一人の人として力になれることがあるかもしれません。

看護師だから分かるのではありません。

話していただけるからこそ、一緒に考えることができるのです。

私も訪問看護師として、

「家族の心をどこまで見られているだろうか。」

この問いを忘れずに、これからも患者さんやご家族と向き合っていきたいと思います。

どうか、本当の気持ちを私たちにも教えてください。

一緒に考えたいと思っています。

看取りを経験されたご家族への思いについては、こちらの記事でも書いています。

最期の瞬間に立ち会えなかった家族へ|それでも看取れなかったわけではない


※この記事は、2022年に埼玉県ふじみ野市で発生した事件をきっかけに、訪問看護師として「家族への寄り添い」について私自身が考えたことをまとめたものです。事件の背景や関係者の状況を断定・評価する意図はありません。亡くなられた方に心より哀悼の意を表するとともに、ご遺族や関係者の皆さまに深くお見舞い申し上げます。

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