「優しい看護師さんやん」|10歳の息子に救われた夜

在宅看取り

こんにちは。こんばんは。シンママナースのたまごです。

訪問看護を始めて10年以上たちますが、久しぶりに思いがこみ上げて涙を流した日があったことを紹介させてください。

自分でも何がきっかけで涙が出るのかわからないことがあります。今回も、付き合いが長かったというよりは、関わりが濃かった患者さんだったというのが正直な感想です。

その方は80代の一人暮らしの男性でした。

余命を告げられてから、遺影の撮影や部屋の整理をコツコツと一人で進めておられました。頑固で真面目な方です。

離婚してから疎遠になっていたお子さんたちにも連絡を取り、遺品整理についても準備を済ませているとのことでした。

訪問するたびに部屋の中がきれいになっていく。

食べる量が減っていく。

整理される場所が少しずつ狭くなっていく。

そんな中でも、一生懸命に生きておられる姿を見て「すごいなぁ」と思ったことを覚えています。

ある日の訪問時のことでした。

部屋に入ると、見知らぬ女性がいました。

「この子の姉です」

そう言われて初めて、お姉さんがいることを知りました。

そして続けて、

「さっき呼吸が止まりました」

と静かに教えてくださいました。

お姉さんは涙を流しながら話してくださいました。

「私は看護師をしていました。体調が悪くて、すぐには来られなかったんです。でも最期に会えてよかった。一人で逝かせなくてよかった」

その言葉を聞いて、私も一緒に涙が出ました。

引っ越しや清掃業者の手配について説明すると、

「あとは私が引き受けますね」

と引き継いでくださいました。

ここまで自分の力で人生の整理をされた方は、後にも先にもこの方だけです。

「自分が死んだ後にどうしてほしいか」

そこまでしっかり決めておられた方も、この方だけでした。

もちろん訪問看護師として手伝える範囲には限界があります。行政へお願いしなければいけないこともわかっていました。

それでも、私たちを信頼して託してくださった気持ちには、できる限り応えたいと思いながら関わらせていただいていました。

そして私は、この方がご逝去された日に初めて家で一人飲みをしながら涙を流しました。

患者さんのご逝去で泣いたことは何度もあります。

でも、家に帰ってまで涙が止まらなかったのは、この方が初めてでした。

胸にぽっかり穴が空いたような喪失感。

目標を失ってしまったような空虚感。

何とも言えない気持ちになり、ビールを飲みながら泣いていました。

すると突然、10歳の息子がリビングにやってきました。

「どうしたん?仕事で嫌なことがあったの?」

眠っているはずの息子が、なかなか寝室に来ない私を心配して見に来てくれたのです。

泣いている私の隣に座り、

「どうしたん?」

と聞いてくれました。

余計に涙があふれてしまい、

「今日、患者さんが亡くなったんだよ」

と話しました。

すると息子は少し考えてからこう言いました。

「おかあさん。それだけその患者さんのことを大切に思ってたってことなんでしょ」

「優しい看護師さんやん」

大号泣です。

患者さんへの想い。

成長した息子への嬉しさ。

いろいろな感情が一気にあふれてきました。

そしてその時、やっと気づいたのです。

私は患者さんを支えているつもりでした。

子どもを支えているつもりでした。

でも実際には、患者さんからも子どもからもたくさんのことを学び、支えられていたのだと思います。

親の知らないところで、子どもは心も身体も成長していく。

患者さんもまた、人生の最期まで私たちにたくさんのことを教えてくださる。

たくさんの想いがごちゃごちゃになっていましたが、その根っこには大きな幸福感がありました。

私と出会った患者さんが、

「この看護師と会えてよかった」

と思ってくれていたら嬉しいです。

そして息子が、

「お母さんがお母さんでよかった」

と思ってくれていたら嬉しいです。

私を成長させてくれるのは、患者さんであり、子どもたちです。

それを改めて実感した、泣き酒の夜でした。

タイトルとURLをコピーしました