こんにちは。シンママナースのシロミです。
在宅介護をしていく中で案外忘れがちになってしまうことが「口腔ケア」です。
今日はその「口腔ケア」について話をしていきたいと思います。
口腔ケアって何?
一言でいうと、わたしたちが毎日している「歯磨き」のことです。
多くの人は、歯医者さんや歯科衛生士さんがしてくださるケアのことだと考えている人が多いのではないかと思います。しかしそんな大げさなものではなく、わたしたちが毎日している歯磨きです。
自分の歯磨きは忘れないのに、寝たきりの方や入れ歯(義歯)の方にたいして忘れがちになる介護者が多いです。
口腔ケアを忘れてしまうことで、誤嚥性肺炎や食欲低下なども引き起こしてしまうので、毎日のケアは大切です。
動ける人こそ要注意!
実は・・・
自分でトイレに行ける
自分でごはんを食べることができる
自分でリビングのテーブルに座ることができる(リビングまで移動できる)
自分で家のなかは自由に動くことができる
このような「自分で動くことができる」人こそ要注意です。
同居しているご家族も「動けるから、歯磨きはしているだろう」と思ってしまうのです。
歯磨きをするタイミングは人それぞれです。そのため、動ける人に対しては「寝る前に(歯磨きを)するだろう」「お風呂に入っているときに(歯磨き)するだろう」と思ってしまうのです。
入れ歯の洗浄方法
入れ歯は「部分入れ歯」と「総入れ歯(全部)」の2種類があります。どちらも共通した洗浄方法です。
- 入れ歯を取り外す(自分で外せる人は自分でしてもらう。自分でできない人は、下の歯から取り出すほうがやりやすいです)
- 歯ブラシもしくは入れ歯用ブラシを使い、流水で洗う(歯磨き粉は使用しない。研磨剤が入っていることで入れ歯を傷つけてしまいます)
- ポ〇デントなどの入れ歯用洗浄剤につけておく(各種メーカーの使用時間を守ってください)
入れ歯はデリケートなものですので、落としたり熱湯をかけることで破損や変形することがあります。また高価なものでもありますので、丁寧に扱ってください。
口の中の汚れをとる
入れ歯を外した後は、口の中の汚れを取ります。
わたしたちも同様ですが、口の中はかなり食べ物が残っています。
嚥下力(飲み込む力)が低下しているお年寄りは、わたしたち以上に残っています。
- うがいをする(吐き出すことができない人は口腔内用ウェットティッシュで拭きあげてください)
- 歯磨き粉をつけて歯磨きをする(歯が1本しか残っていなくても、磨いてください)
- スポンジブラシで拭きあげる
- 保湿剤を塗布する
当然ですが、食べ物が口の中に残っていると誤嚥してしまう可能性が高くなります。また、口臭が強くなる原因となります。
口腔用ウェットティッシュって何?
ドラッグストアなどで販売されているのですが、普通のウェットティッシュみたいなものです。
使い方は、口腔用ウェットティッシュを指に巻き付けて口の中を拭く、というものです。
防災グッズとしても準備しておくといい、と言われているのでご存じの方も多いかと思います。
ただ、認知症のある人や歯が残っている人にはあまりお勧めしません。なぜなら「噛まれる」可能性があるからです。
ちなみに、人間の噛む力はほぼ体重と同じくらいらしいです。年を取ると噛む力も弱くはなりますが、絶対に大丈夫という保証はありません。あとで説明をするスポンジブラシよりも、指に巻き付けて拭き取るほうが簡単で短時間で済ますことができるのですが危険も伴います。
歯があっても指に巻き付けて拭くほうがいい方には、バイトブロックを使用することをお勧めします。
スポンジブラシって何?
ウェットティッシュ同様、ドラッグストアで購入できます。
簡単に言うと15㎝くらいの棒にスポンジがついているものです。スポンジを水に湿らせて、口の中の汚れを取るためのものです。棒の太さは綿棒と同じくらいです。
痰などを絡めとる時に便利です。
わたしの使い方を紹介します。
- コップに水を入れる
- マウスウォッシュを少量入れる(口臭予防や本人の爽快感のため)
- スポンジブラシをコップの水につける
- スポンジの水を絞る(ムセてしまう人は固く絞ったほうがいい)
- 口腔内の汚れを拭き取る⇔コップの水で洗浄
- スポンジブラシに保湿剤をのせて、口腔内に塗布する
口の中に残っている食べ物や痰などをコップで洗うので、汚れてもいいコップを利用するといいと思います。
口の中を触られることを嫌がる人は、多いです。スポンジブラシを噛んでしまう人もいらっしゃるのでバイトブロックを使ってみてください。
保湿剤って何?
口を開けて眠っている人って意外と多いですよね。わたしも酔っぱらってしまったときは、口を開けて寝ていることが多いそうです(こども情報w)
口を開けて寝てしまった翌朝。口の中が乾燥していることはありませんか?乾燥すると口腔内に細菌が発生しやすくなります。口の中がネバネバになり不快感を感じます。ひどくなると舌がひび割れて、水を飲むにも痛みを感じるようになります。
年を重ねると、水分量が低下します。口の中の水分量がただでさえ低下てしまっている上に、口を開けて眠ってしまうことでさらに乾燥がひどくなってしまうのです。
口の中の乾燥を予防するために「口腔内保湿ジェル」というものが販売されています。これもドラッグストアで購入できます。最近はいろいろな種類の味も楽しめるようになっています。
- 指もしくはスポンジブラシに適量のジェルを出す
- 上あごや舌も含め、口腔内全体にジェルを塗布する
- 余った場合は吐き出してもらう、もしくは拭き取る
口臭予防にもつながります。
バイトブロックって何?
ドラッグストアを見に行ってきましたが、ありませんでした。ただ、通販サイトでは取り扱いがありました。
歯医者などでも使用されているもので、指やスポンジブラシのようなものを噛んでしまうことを予防(開口を保持する)ためのものです。
上の歯と下の歯の間にいれて使うのですが、当然柔らかすぎると噛みつぶしてしまうのである程度の硬さが必要です。また、小さすぎると飲み込んでしまう恐れがあるので注意しなければなりません。
しかし、認知症などがあり開口を維持できない人の口腔ケアを行う時には使ったほうがいい道具の一つです。
訪問看護師としては
3つの商品(口腔内ウェットティッシュ・スポンジブラシ・口腔内保湿ジェル)について書かせていただきましたが、訪問看護師としては購入してもらうことを勧めるのはいかがなものかと個人的には思っています。
確かに使い捨てできることは便利ですし、介護者にとってはラクです。家族ができるケアだからこそ、ラクで気軽にできることが一番だと思います。しかし、訪問看護師がラクをするために「買ってください」というのは違うと思うのです。
実際、口腔内ウェットティッシュは「ガーゼ」で代用できます。口腔内保湿ジェルについても「オリーブオイル」で同様の効果を得ることができます。スポンジブラシも割りばしにガーゼを巻き付けるなど、工夫一つで余分なお金を使ってもらわずに済みます。バイトブロックにしても、短くした割りばしを数本準備して、それにガーゼやハンカチを巻き付けるだけで十分です。
経済状況は各家庭によってさまざまです。裕福な家庭もありますし、厳しい家庭もあります。わたしたち訪問看護師は「家族がラクに介護ができる」という前提はもちろんですが。家庭状況も考えて市販グッズをお勧めしなければいけないと思っています。
実際、介護期間が長い可能性もありますが、短い可能性もあります。状況に合わせて、「患者さん・家族のお金を使わせる」ことを考えてケアをしていきたいと思っています。