介護保険について③

在宅介護の話

こんにちは。シンママナースのシロミです。

前回までは介護保険のサービスはどのようなものがあるのか、について書かせていただきました。

今回は例題をあげてどのような介護保険を使うと生活しやすくなるかという一例を考えてみたいと思います。

要介護1 年相応の物忘れはあるが日常生活はしっかりと維持できている

 80歳の女性Aさんは介護保険を申請して「要介護1」と診断されました。屋外は杖。屋内は壁を伝い歩きでゆっくりであれば自力で歩けます。少し難聴ではありますが、コミュニケーションは良好で、とても社交的な方です。年相応の物忘れがあり、薬管理が苦手です。息子さんと2人暮らしですが、息子さんはお仕事をされているため日中はおひとりで過ごされています。

限度額は約16,000単位

 単位とは「単価は1単位10円を基本とし、サービスの種類ごとに設定された人件費率や地域ごとに設定されたパーセンテージに合わせて加算されるもの」です。なぜ単位を使用しているのかというと、地域によって物価や人件費に違いがあるため、その地域差を吸収する仕組みが必要なためとなっています。

 ちなみに、約16,000単位をオーバーしてしまうと、オーバーした分は全額自己負担になります。約という表し方をしていることについては保険改定があると単位数も若干増減する可能性があるからです。できる限り限度額内でサービスを利用しなければ、全額負担はかなり大きな負担となってしまします。

どのようなサービスが必要になるのか

では例題のAさんにはどのようなサービスが必要となるでしょうか。ここからはわたしの意見です!!絶対ではありませんので注意してください。

まずは「コミュニケーション良好」「社交的」という性格からデイサービスの利用を勧めます。お風呂にも入ってもらったら安心です。リハビリなどもしてもらうとさらにいいと思います。
すると少なくても1回650単位くらいです。それを週3回で単位。1ヶ月(4週)で考えると7,800単位です。

また薬管理が苦手だとのことでしたので、訪問看護を週1回30分で利用してもらうことにします。1回500単位なので1ヶ月で2,000単位です。24時間365日何かあった際にかけつけてくれる「緊急訪問看護加算」というものもつけておくとしたらプラス約600単位ですが、緊急時加算については16,000単位の中には含まれません。

Aさんは一人の時間も危険リスクはあまりないようなので、これくらいのサービスから開始してみるのがいいかもしれません。

合計で9,800単位プラス緊急時加算600単位となります。16,000単位以内でしっかりとおさまっていますし、今のAさんに過剰にならない程度のサービスで機能維持をしていくことも必要だと思います。
介護保険の単位とは別にデイサービスでは食事代やレクレーション代金が別途かかるので注意が必要です。

要介護5 ほとんどの日常生活において介助が必要です

 78歳Bさんは2年前に介護保険を申請しました。申請した時には介護3で車いす生活を送っていましたが、今回ベッドから自力で起き上がることができなくなりました。同居ご家族の希望もあり、再度調査を受けると「要介護5」と判断されました。

 ベッド横に置いてあるポータブルトイレを利用していますが、ベッドから起こして、立ちあがるまでにも介助が必要です。立ちあがった後はベッド柵を握ってもらいズボンをおろします。その間は何とか立っていることができます。ズボンをおろした後ポータブルトイレに座ってもらい用を足します。自分で拭くことはできますが、便のときはきちんと拭くことができたのか確認が必要です。終了したら、車いすに乗ってもらったり、再びベッドに横になってもらうなど本人の希望にあわせて対応しています。

 食事について、数口であれば自力で口元へ運ぶことができます。しかし疲れてしまうと、食べなくなってしまうため介助が必要となります。夕食以外は車いすに乗ってもらってリビングで食事をしますが、夕食はベッドの上でギャッジアップをして食べてさせてもらいます。

 お風呂はシャワーのみです。シャワーチェアに乗ってもらい、浴室へ行きます。洗髪から洗体まですべての介助が必要です。洋服の着脱についても、腕を曲げたり伸ばしたりすることはできますが、基本的には介助が必要です。

限度額は約36,000単位

上記でも伝えましたが、「1単位10円を基本」としています。介護1の16,000と比較するとかなりの額を使えるような印象はありますが毎月36,000円程度の出費とおむつ代などの費用もかかってきます。

限度額をオーバーしてしまうと、10割自己負担となってしまうため限度額内でおさめられるように考えていきます。

どのようなサービスを検討していくか

ご家族が不在の曜日が週4日あると仮定します。その曜日はすべてデイサービスに行っていただきます。

デイサービスでは、入浴やリハビリもしてもうと1回1,100単位くらいです。それが週4回4,400単位で。1ヶ月(4週)で考えると17,600単位となります。(食事代やレクレーション代金は別途必要です)※上記のAさんと1回の単位が異なりますが、デイサービスは介護度によって単位数が異なるためです。

デイサービスに行かない日は訪問看護師に訪問してもらいます。爪を切ったり、床ずれがないか確認をしたり、必要であればリハビリも実施します。1回の訪問で1時間とすると850単位くらいです。1ヶ月で3,400単位です。緊急時に駆けつけてもらえるよう緊急時加算を付けようと思いますが、限度額外であるため、別にして考えます。

デイサービスと訪問看護の2つのサービスだけの利用となると、ご家族が在宅されてる日はトイレや食事もすべてご家族が対応するということになってしまいます。

そのため、ポータブルトイレへの誘導や陰部洗浄などの保清を含め週2回ほど訪問介護を導入するのもいいかもしれません。できれば1日に2回来てもらって、食事介助をしてもらうとご家族の負担がほんの少しとれるかもしれません。1日2回(30分未満と60分未満の計2回)で650単位です。週2回で1,300単位。1ヶ月で5,200単位となります。

この3つのサービスを利用し、ご家族の協力も得ながら26,000単位程度で収まります。しかし、ここに福祉用具(ベッドや車いす、床ずれ予防マットレスなど)を含めると30,000単位ほどになるかと思います。

まとめ

このように介護度によって、使える単位数が大幅に変わります。

今回の例のように介護5で36,000単位程度使えるからといって「余裕」のある介護生活を過ごせるわけではありません。やはり家族の負担は必ずありますし、使える単位数が増えたことによる費用負担も大きくなります。

できる限り自分でできることはしてもらう(残存能力の活用)」ことは、介護生活を継続していくうえで重要です。日頃から「やってあげる」のではなく「やってもらう」「頼りにする」ということも考えながら生活をしていってもらえればいいなと思います。


タイトルとURLをコピーしました