こんにちは。40代シンママナースのシロミです。
みなさんは、身近な人や自分自身が「治療の効果がありません」と主治医から言われたらどうしますか?
「なんだかいつもと違うなぁ・・・」と思いながらも毎日を慌ただしく過ごされている方も多いと思います。調子が悪いことを気にかけながらも「病院に行くのが怖いなぁ」と思いながら過ごされている方もいるかもしれません。
そんな調子で数日、数か月を過ごし、勇気をふりしぼって病院に行きました。たくさんの検査を受けた結果に「がん」だと告知されました。
多くの人は内服治療・放射線治療・抗がん剤・食事療法や運動療法、さらには民間療法なども試しながら病気と闘うことを選択するのではないでしょうか。
「治療の効果が出ていません」「自分らしく過ごしてください」
治療を始めて、数か月・・・数年・・・経過したある日。定期受診や体調不良等の臨時受診で病院へ行くと主治医から「治療の効果があまり出ていないみたいです」「あとは自分らしくご家族と一緒に過ごせる方法を考えてください」などと言われることがあります。俗にいう「余命宣告」です。
自分の家族もしくは自分自身が「治療できない」と言われたとき、どんなことを考えたり、思ったりするのでしょうか。
わたしは看護師でありながら、ごくごく身近な身内がそのような宣告を受けた場面に立ち会ったことはありません。もちろん身内に「がん」で亡くなった方は何人もいますが、宣告の場面に遭遇したことは一度もありません。
目標がなくなってしまった・・・
髪が抜けても、吐いても、口内炎ができても、食事量が減ってしまっても、体力が落ちても、肌が荒れても、痩せてしまい以前の面影がなくなってしまっても、「完治してやる」という目標があったから頑張ってこれたのだと思います。
「子どもが結婚するまでは」「孫が生まれるまでは」「春が来るまでは」「あと5年は・・・」という目標があるからこそ、つらくてきつくて大変な治療を頑張ってこられたのだと思います。
それなのに・・・
病気が進行している・・・
抗がん剤の効果がなくなって、がんが大きくなってきている。
何度も抗がん剤の種類を変えたのに、効果がないみたい。
抗がん剤の変更や放射線治療を繰り返されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
抗がん剤治療を実施するだけの体力がない(病院では採血結果などで確認しています)などと言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「治療ができない」と主治医が判断したときに、「ホスピスを見学してみましょう」「家族で有意義に過ごせる時間を大切にする方法を考えましょう」などと話をされると思います。
実は、食事量や体力が低下してきていることをご家族や本人も自覚されてはいたと思います。しかし、改めて主治医から治療終了・治療困難だという話を受けることになります。
もちろん治療終了・治療困難=すぐに死ぬ、ということではありません。しかし、「治療ができない」と言われた方は「死」というものをさらに身近に感じることになり頭が真っ白になります。
そのあとになると、主治医や看護師の言葉が入ってこない状態となるのではないでしょうか。
最期の場所を考える
「治療ができない」と言われた方は「死」についてもう一度考えるといわれています。
もう一度というのは、「がん」と宣告されたときに「死ぬかもしれない」と誰もが思うからです。
その後、抗がん剤などの治療をしながら目標をもって生きていく方法を模索していくのですが、「治療ができない」と言われたあと、少し時間がたち頭が回転してくるようになると「どこで死のうか」ということを考えるそうです。
身体の状態にもよりますが選択肢の中には「自宅で過ごす」というものが出てくると思います。実際、自宅で最期まで過ごすという方は近年、増加傾向にあります。
もちろん病院で最期の時間を迎える人もいらっしゃるのですが、「体が動くうちは自宅で過ごす」と思うのが一般的ではないでしょうか。
情報量が多すぎる・・・
本来であればしっかり、じっくりと話し合って考えて決めなければいけないことなのですがショックを受けられているご家族・ご本人を置いてきぼりにして多くのことが決まっていきます。
- 訪問看護や訪問診療が自宅に来られるようにするための手続き
- 介護保険を使えるようにする手続き
- ホスピス病院(病棟)の見学
大まかにいうとこの3つだと思います。そしてこの3つをさらに細分化していくことになります。
「介護保険の手続きをしてもらいたいので、市役所へ行って申請してきてください」
「介護保険で使えるサービスは訪問介護、福祉用具、訪問看護などいろいろあります」
「訪問診療の先生はどのような先生がいいですか」
「何かあった時に病院へ入院できるように、ホスピス病院を見学しに行ってください。どこがいいですか」
もちろん、一つ一つ丁寧に説明はしてくれるのですが受け入れられない心境にあるため「勝手に」周りが全部進めている感覚になっていたと話される方はかなり多いです。
ご家族の決断
「今の状態(一人でトイレに行ける)であれば、自宅で過ごせるかもしれない」
多くのご家族はそのように考え、自宅で過ごすことができるように準備をされます。
しかし、実際は体力が低下してきており、急変リスクの高い方を医療ケア(訪問看護・訪問診療)の介入なしに自宅で過ごさせることは大きなリスクを伴います。
本人はもとより、ご家族の気合や頑張りだけではどうしようもなくってしまう時期が遅かれ早かれくるのです。
最期の時間を有意義なものにするためにも、ご家族の負担を少しでも軽くすることを考えていかなければいけないのです。
「寝たきりになったりおむつ交換が必要になったら自宅では無理かもしれない」と言われるご家族ももちろんいらっしゃいます。
そのように考えることは大切なことだと思います。どこまでなら許容できるのかを明確にしておくことは、わたしたち訪問看護師が介入させていただいたときに非常にありがたい指針となります。
ただ、できないとあきらめるのではなく、医療ケアを早期から導入し、適切なアドバイスを受けてください。わたしたち訪問看護師やヘルパーが介入することで寝たきりになったから病院に入院させなければいけないという考えが変わってくるかもしれないからです。
もちろん決断は変わってもいいのです。
変わることはいけないことではありません。それは当然のことだと思います。
しかし、しっかりと知識をつけてもらうことで本人だけではなく、ご家族も有意義な時間を過ごすことができるようになる可能性があるということを理解してもらえると嬉しいです。
希望は持っていてもいい
余命宣告を受けた方でも自宅で過ごされると元気になるということが少なくありません。
治療のために控えていたお酒やお刺身など、おいしいものを食べることで元気になる方も多いです。
数週間と宣告された方が、3か月、半年と頑張られるというのは一人二人の話ではありません。
訪問看護師がいることで
わたしたち訪問看護師が介入させていただくと「安心できる」と言っていただくことが多いです。とくに本人よりもご家族がおっしゃってくださいます。
実際、自宅に余命宣告を受けたご家族がいるということは「何か起きるかもしれない」「明日呼吸をしていないかもしれない」「突然、痛みが出てくるかもしれない」と様々な不安を抱えて生活をするということです。
買い物にさえ慌てていくご家族もいるほどです。
そのような気持ちの時に私たちが「365日24時間いつでもかけつけます」と伝えることで「よかった」と言っていただくことができます。ステーションの状態にもよりますが、30分以内で対応できるように工夫されているところがほとんどではないでしょうか。
その安心感が、自宅で過ごす時間を楽しいものにすることにつながっているそうです。
自宅での時間が楽しいものになると「出かけようかな」「食べてみようかな」など、やりたいことに目が向きます。
すると「生きる意欲」が出るみたいです。
希望≠生きる
希望をもつことはとても大切だと思います。しかし、それは「死なない」ということではありません。
治療できないほどの病気であることには変わらないので、近い将来必ず「死」は訪れます。「死んでほしくない」と思うことは大切ですが、「死ぬはずはないから準備はしない」ということは意味が違うということを念頭に置いていただきたいと思います。
希望をもつことは生きるとイコールではありません。
家族として、友人として「死んでほしくない」という気持ちはもちろん本心であるし、真実です。
ただ、「死んでほしくないから死ぬための準備(訪問看護、訪問診療、介護保険の利用など)はしない」ということは最終的には本人を一番苦しめてしまう結果となる可能性があります。
穏やかに過ごしていくために
お金の件についてはまた別のページで話をしていきたいと思いますが、穏やかに過ごしていただくためにご本人ができることを考えたいと思います。
まずは「無理をしない」「我慢をしない」ということです。
病気が進行することで痛みが強くなる人がいます。それは我慢するのではなく「あれ?」と思った段階で教えてください。ご家族は痛みに苦しんでいる本人をみて「何もしてあげられない」と悲しい気持ちになり、自宅で過ごしてもらうことへの不安な思いが強くなります。
痛み止め(鎮痛剤)も「あれ?」の程度から使い始めれば効果も早いです。
我慢できないくらいの痛みになって使い始めても効果が出るまで苦しんでいる姿をみるのは、つらいです。
そして「ご家族の疲労感に寄り添う」ことです。
ご家族は夜も眠れないほど緊張した毎日を過ごします。「生きていて欲しいけど、眠れないのはつらい」という状況になってきます。
もちろん、そうなる前に訪問看護師などが「一度入院してもらいましょうか(レスパイト入院)」と声掛けをすることがあると思います。そのときにはご家族の頑張りを認めて一度入院もしくはショートステイを利用することを前向きに検討してみてください。
また自宅に帰ってくるために、ご家族に休息を作ってあげてください。
穏やかに自宅での時間を過ごすためにお互いに歩み寄る。
疲れがたまってくるとお互いに思いやりがなくなってしまうので、訪問看護師やヘルパーに甘えながらぜひホッと一息できる時間を過ごしていけるようにと考えています。