在宅看取りに迷ったら|「家に帰してあげられない」は冷たいことではありません

在宅看取り

こんにちは。こんばんは。40代シンママナースのたまごです。

今日は、誰もがいつか迎える「最期の時間」についてお話したいと思います。

訪問看護師として働いていると、たくさんの「最期の時間」に立ち会わせていただきます。

そして感じるのは、

「最期の時間」は、本当に人それぞれ違う

ということです。

病気や身体の状態はもちろん、ご本人の希望、ご家族の生活、これまでの家族関係、介護を支える環境など、さまざまなことが関係します。

だからこそ私は、

「最期は家で過ごすのが一番いい」

と簡単に言えるものではないと思っています。

今回は、在宅看取りに関わってきた訪問看護師として、「家に帰してあげたいけれど、本当に家で介護できるのだろうか」と悩んでいるご家族に伝えたいことを書いてみたいと思います。


在宅で最期を過ごすという選択

かつて日本では、自宅で最期を迎える方が多くいました。

厚生労働省の人口動態統計によると、1951年には亡くなった方の約8割が自宅で最期を迎えていました。その後、医療の発展や入院医療の普及などによって、病院などの医療機関で最期を迎える方が増えていきました。

現在は、訪問診療や訪問看護、介護サービスなどを利用しながら、自宅や施設で療養を続けるという選択肢もあります。

ただ、私は「最期は自宅で迎えるほうがいい」とは思っていません。

大切なのは、

「本人はどこで、どのように過ごしたいのか」

そして、

「ご家族はどこまでなら無理なく支えられるのか」

を一緒に考えることだと思っています。

厚生労働省でも、「人生会議(ACP)」として、もしもの時にどんな医療やケアを受けたいのか、どこで誰と過ごしたいのかなどを、本人・家族・医療や介護の関係者で話し合っておくことを勧めています。

在宅介護は、家族だけですべてを抱える必要はありません。介護保険で利用できるサービスについては、こちらの記事でも詳しくお話しています。

▶ 介護保険で利用できる在宅サービス|訪問看護師がわかりやすく説明します


在宅看取りは、綺麗ごとだけではありません

訪問看護師として働く中で、私はさまざまな在宅での最期の時間に関わらせていただきました。

穏やかに過ごされる方もいれば、ご家族に囲まれて最期の時間を迎えられる方もいます。

でも、在宅看取りは決して綺麗ごとだけではありません。

実際には、

  • 介護するご家族の疲れ
  • 仕事や子育てとの両立
  • 経済的な問題
  • 家族それぞれの考え方の違い
  • 本人と家族とのこれまでの関係
  • 支える人の体力や気力の限界

など、さまざまな問題が重なることがあります。

「本人を家に帰してあげたい」

そう思っていても、気持ちだけではどうにもならないことがあります。

そして、それは決して「家族の愛情が足りない」ということではありません。

私は訪問看護師として、ご本人だけでなく、介護するご家族にも生活があるということを忘れてはいけないと思っています。

だからこそ、「自宅で看取ること」だけを目標にするのではなく、ご本人とご家族の両方にとって無理のない方法を一緒に考えることが大切だと思っています。

ご家族の想いにも、いろいろな形があります

例えば、

「お父さん、家に帰ってきて」

と家族みんなで迎え入れ、介護をされるご家庭があります。

一方で、

  • 「本人が帰りたいと言うから…」
  • 「病院にずっと入院しているのは金銭的に厳しいから…」

という事情の中で、自宅介護が始まるご家庭もあります。

どちらが正しい・間違っているではありません。

ただ、介護への関わり方には、どうしても違いが出ることがあります。


家族それぞれの事情が、在宅介護にはあります

訪問看護をしていると、ご家族の関係性や生活背景は本当にさまざまだと感じます。

ご家族みんなで介護に関わるご家庭もあれば、一人の方がほとんどの介護を担っているご家庭もあります。

また、これまでの親子関係や夫婦関係、離れて暮らしてきた時間など、それぞれのご家族にこれまでの歴史があります。

だから、「家族なんだから介護できて当然」と簡単に言えるものではないと私は思っています。

介護する方に余裕がなくなってくると、

  • 清潔ケアまで手が回らない
  • オムツ交換が負担になる
  • ご本人の小さな変化に気づく余裕がなくなる

ということもあります。

でも、それだけを見て「愛情がない」と判断することはできません。

仕事や子育てをしながら介護している方もいます。介護する方自身が病気を抱えていることもあります。これまでの家族関係の中で、介護すること自体につらさを感じている方もいます。

在宅介護には、そのご家庭にしか分からない事情があります。

私たち医療・介護職も、目の前のケアだけを見るのではなく、ご本人とご家族がこれまでどんな生活をしてきたのか、これからどんな時間を過ごしたいのかを一緒に考えていくことが大切だと思っています。

「家に帰してあげられない」は冷たいことではありません

訪問看護をしていると、

「本人は家に帰りたいと言っている。でも、家で介護できる自信がない」

「家で看取ってあげたい気持ちはある。でも、仕事もあるし、ずっとそばにいることはできない」

そんな悩みを抱えるご家族に出会うことがあります。

中には、

「家で看取ってあげられない私は、冷たいんでしょうか」

と自分を責めてしまう方もいらっしゃいます。

でも、私はそうは思いません。

  • 小さなお子さんがいる
  • 仕事をしている
  • 自分自身の生活がある
  • 介護する方にも持病や体調の問題がある
  • 体力や気力に限界がある

事情はご家庭によってさまざまです。

本人の「家に帰りたい」という気持ちは、もちろん大切です。

でも同じように、その生活を支えるご家族の気持ちや生活も大切です。

「家に帰してあげられない」という選択をしたからといって、愛情がないわけではありません。

病院や施設で過ごすことを選ぶことも、家族として考えた末のひとつの選択だと私は思っています。

在宅での介護や看取りによって、ご家族の生活そのものが立ち行かなくなってしまうこともあります。

だから、

「本人の希望を叶えてあげたい」

という気持ちと、

「私たち家族にできることはどこまでだろう」

という現実の両方を考えていいんです。

「連れて帰ってみたけど無理だった」でもいい

「本人は家に帰りたがっている。でも、本当に家で介護できるのかわからない」

そんな時、最初から「最期まで絶対に家で看取る」と決めなくてもいいと私は思っています。

実際に訪問看護をしていると、

  • 一度退院して自宅で過ごしてみたけれど、介護が難しくなり再入院された方
  • 症状が強くなり、自宅で過ごすことが難しくなった方
  • ご家族が一生懸命介護を続けたけれど、体力や気力の限界を迎えた方

にも出会います。

でも、それは「在宅介護に失敗した」ということではありません。

一度でも、

「家に帰りたい」

という本人の希望を叶えようとしたこと。

そして実際に家で過ごしてみて、

「ここから先は家族だけでは難しい」

と判断すること。

どちらも、その時その時でご本人とご家族にとって一番いい方法を考えた結果だと思います。

一度自宅に帰ったからといって、必ず自宅で最期まで過ごさなければならないわけではありません。

状況が変われば、選択も変わっていい。

「やってみたけれど、難しかった」でもいいんです。

介護に「これが正解」という答えはないと、私は思っています。


最期の時間に思うこと

訪問看護師としてたくさんの方の最期の時間に関わらせていただく中で、私は時々、これまでその方が歩んできた人生について考えることがあります。

どんな仕事をしてきたのか。

どんなことが好きだったのか。

ご家族とどんな時間を過ごしてきたのか。

もちろん、最期の過ごし方だけで、その人の人生や家族との関係を決めつけることはできません。

家族がそばにいないからといって、愛されていなかったわけでもありません。

家で看取ることができなかったからといって、家族との関係が悪かったわけでもありません。

それでも、最期の時間に関わらせていただくと、人は一人だけで生きているわけではないんだなと感じることがあります。

これまで関わってきた人との思い出や、交わしてきた言葉、その人が大切にしてきたもの。

そうしたものが、その方のそばに残っているように感じる瞬間があります。

だから私は、自分自身の人生についても考えます。

  • 大切な人には、ちゃんと「ありがとう」を伝えよう
  • 周りの人との時間を大切にしよう
  • そして、自分自身の人生も大切にしよう

最期のために生きるわけではありません。

でも、いつか最期の時間を迎えるからこそ、今の時間を大切にしたい。

訪問看護をしていると、そんなことを考えさせてもらうことがあります。


最後に|在宅看取りに「ひとつの正解」はありません

在宅看取りは、決して綺麗ごとだけではありません。

「家に帰りたい」というご本人の希望を叶えてあげたいと思う一方で、

「本当に家で介護できるだろうか」
「仕事をしながら続けられるだろうか」
「最期までちゃんと看てあげられるだろうか」

と不安になるのは、とても自然なことだと思います。

自宅で最期まで過ごすことを選んでもいい。

病院や施設で過ごすことを選んでもいい。

一度自宅に帰ってみて、「やっぱり難しい」と選択を変えてもいい。

大切なのは、「どこで看取ったか」だけではなく、ご本人とご家族がその時々で何を大切にしたいのかを考えることだと私は思っています。

「家に帰してあげられなかった」

ではなく、

「私たちなりに考えて、この選択をした」

と思えることも、とても大切なのではないでしょうか。

もし今、在宅での介護や看取りについて悩んでいる方がいらっしゃったら、一人で答えを出そうとせず、主治医や訪問看護師、ケアマネジャーなどに相談してみてください。

ご本人だけでなく、介護するご家族にとっても無理のない方法を、一緒に考えてもらってくださいね。

そして、相談しても「なんとなく合わない」と感じることもあると思います。

そんな時は、我慢し続けなくても大丈夫です。支えてくれる人との相性について、こちらの記事でもお話しています。

▶ 訪問看護師と合わないと感じたら変えてもいい|在宅介護で大切な「相性」の話

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